Royal College of Art (RCA) 修士号(MA)取得という国際的なバックグラウンドを基盤に、長年、日本の美術教育の最前線で指導してきた松の木氏。その先見性はアカデミズムの世界からも注目される。
「情報の構造」を芸術の視点から解体・再構築するその姿勢は、伝統的な絵画からデジタル・アーキテクチャ、ファッションまで、ジャンルを超越した「芸術思想」として結実している。
教育プログラムの研究・開発
多摩美術大学 美術学部 情報デザイン科 講師(1999年〜2002年)
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招聘の経緯と役割: 日本における計算機科学の権威である故・石田晴久教授(東京大学名誉教授)招聘により着任。芸術とテクノロジーが交差する「情報デザイン」の黎明期において、クリエイティブの実践知をアカデミズムに統合する役割を担う。
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デジタル映像教育の体系化(2002年〜2003年): 当時は手法が確立されていなかった「デジタルノンリニア編集」の教育カリキュラムを独自に研究・開発。ハードウェア(計算機環境)と表現手法(編集理論)の両面から、学生が高度な映像表現を習得するためのメソッドを構築した。
慶應義塾大学 情報環境学部(1995-1997年)
訪問研究員としてデジタルテクノロジーと表現が融合し始めた黎明期において、ネットワークを介したコミュニケーションと芸術表現の可能性を研究。
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研究背景: デジタルテクノロジーと表現が融合し始めた黎明期において、ネットワークを介したコミュニケーションと芸術表現の可能性を研究。
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実践的成果: 日本初のインターネット・カフェ「Electronic Cafe International Japan」のプロデュース(1995年)と連動し、産学連携によるデジタル文化の基盤構築に寄与。
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デジタルハリウッドでの特別講義や、各種マルチメディアプログラムの審査委員長(ハイビジョン普及支援センター等)の活動を通じ、研究成果を次世代教育へ還元。
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学術的意義: 既存の美術教育の枠組みを超え、情報工学とデザインを横断する「情報デザイン」の概念を、多摩美術大学での講師職に先んじて理論化した期間と位置づけています。
学校法人片桐学園 日本工学院専門学校 デザイン科 講師(1997年〜1999年)
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教育の主眼: クリエイティブ・プロダクション(有限会社MKI)経営者としての視点と、慶應義塾大学SFC訪問研究員としての先端知見を融合。単なる操作スキルの習得に留まらず、業界の第一線で通用する「プロフェッショナル・マインド」と「論理的デザイン思考」を軸とした指導を展開。
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クリエイター育成の実績: デジタルメディアへの移行期において、グラフィック、映像、Webを横断的に扱えるマルチメディア・クリエイターを多数育成。卒業生の多くを業界の主要プロダクションへ輩出し、日本のデジタルデザイン界のボトムアップに寄与した。
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カリキュラムへの影響: 現場のワークフローに基づいた実践的な課題設計を行い、専門学校教育における「実務直結型カリキュラム」の先駆的モデルを構築。
専門学校ルネサンス・デザイン アカデミー アドバイザー(1994年〜1997年)
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カリキュラム・コンサルティング: 既存の教育課程を抜本的に見直し、次世代のデザイン業界を見据えた新カリキュラムを策定。特にデジタルメディアの導入と、実務に即した産学連携プログラムの構築を主導した。
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プロモーション・ブランディング開発: 学校のアイデンティティを再定義し、志願者増に直結する戦略的なプロモーションを開発。FM K-mixでの番組ディスクジョッキー活動を通じ、メディアを巻き込んだ独自の広報戦略を展開し、地域における学校の認知度とブランド価値を劇的に向上させた。
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次世代育成のプラットフォーム化: 高校生を対象とした「Design Grand Prix」の審査委員長を務めるなど、教育の門戸を広げ、地域全体のクリエイティブボトムアップに寄与。
美大受験予備校 立川美術学院 デザイン科 / 高1&2年生デザイン基礎科 講師(1982年〜1987年)
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指導の核心: 多摩美術大学在学中より、美大受験の最前線にて指導を開始。デッサン、色彩構成、平面構成といった造形の基礎理論を徹底し、学生一人ひとりの観察眼と構成力を養う個別指導に従事。
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教育的意義: 「技術の伝達」に留まらず、厳しい競争環境の中で学生のモチベーションを維持し、自己表現の端緒を見出すためのメンターとしての役割を果たす。この時期に培った「基礎造形への深い理解」が、後のデジタル表現や地方創生における教育活動の強固な土台となっている。
国際交流プロジェクトの立案・遂行(2003): ロンドン芸術大学(University of the Arts London / LCC)との「日英交換留学プロジェクト」を起案。学内交渉から現地の教育プログラム調整までを一貫して担当し、グローバルな視座を持つクリエイター育成の基盤を構築した。
産学官連携による教育支援・審査実績
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マルチメディア チャレンジ プログラム 審査委員長(1996): (財)ハイビジョン普及支援センター主催。次世代映像クリエイターの発掘を目的とし、デジタルメディアにおける新たな評価基準を策定・選考を指揮。
高校生グランプリ「Design Grand Prix」審査委員長(1995年〜1997年)
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役割と成果: 学校法人爽青会 専門学校 ルネサンス・デザイン アカデミーが主催する全国規模のコンクールにおいて、審査委員長として評価指針を策定。
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教育的意義(高大接続): 中等教育(高校)における美術・デザイン教育の成果を正当に評価し、高等教育(大学・専門学校)への円滑な橋渡しを行うためのプラットフォームを構築。早期の才能発掘と、デザインを通じた自己表現の動機付けに寄与した。
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社会への影響: 地方都市(浜松)を拠点とした全国展開のコンクールを通じ、地域格差のないクリエイティブ教育の普及に貢献。
静岡市中山間地振興助成事業 産学連携プロジェクト(2015年)
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役割: 常葉大学造形学部における外部アドバイザー・プロジェクトディレクター。
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活動内容: 静岡市中山間地域(オクシズ)の振興を目的とし、行政(静岡市)・大学(常葉大学)・民間企業が協働するブランディングプロジェクトを指導。
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教育的成果: 学生に対し、実際の地域課題に基づいた商品開発(オーガニックコスメのODM等)や地域ブランドの構築プロセスを指導。デザインが単なる「造形」に留まらず、地域の産業振興や合意形成に寄与する「社会装置」であることを、実践を通じて教育した。